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タイトル: 実験室レベルで開発された「尿を用いる水溶性ビタミンの栄養評価」をフィールドワークに活用することへの妥当性研究
その他のタイトル: Validity study to utilizing "nutritional evaluation of water-soluble vitamins using urine" developed at a laboratory level in fieldwork
著者: 辻, とみ子
発行日: 2010/03/18
抄録: 諸言 現代社会にみられる旺盛な食への関心と食行動は、食の多様性とグローバル化や外部化を進展させ、日本人の食意識と食生活を大きく変容させてきた。このような日常の食生活は、現時点にいたってエネルギー摂取の過多や微量栄養素摂取の不足という問題状況を顕現させ、メタボリックシンドロームや生活習慣病の罹患率の増加が憂慮されている。日本人の食生活を改善するには、フィールドワークの研究成果に裏打ちされた精度の高い栄養教育システムを開発して実践し、これを社会的に広めることが緊要である。 旧来の栄養教育システムでは、もっぱら体内に摂りいれられた食品側の情報に依拠してきた。しかしながら、食品側の情報だけを活用した栄養評価には限界がある。この不十分さを補いかつ代替しうる方法として、尿や血液などの生体試料から得られた生体情報を指標として用い、より正確かつ客観的に栄養評価をおこなう方法が実験室レベルで開発された。われわれのグループでは、日本の大学生を対象として尿中の水溶性ビタミンの排泄量がその摂取量と強く相関することを実験室レベルで確認し、水溶性ビタミン尿排泄量が摂取量を評価するための生体指標となりうることを明らかにした。 本研究は、この先行研究を発展させようとするのであり、自由に生活している小学生・大学生・高齢者の三世代を調査対象に選定して、フィールドワークによる水溶性ビタミン尿排泄量と摂取量との間に実験室レベルと同様な関連性があるか否かを検証する。さらに生体指標としての有効性を確認するため、「尿」と「尿排泄率」から算出した水溶性ビタミン推定平均摂取量と、「食事調査」から算出した水溶性ビタミン平均摂取量との関連性を検証した。 第一章 自由に生活する18~27歳の日本の大学生156人を対象として、水溶性ビタミンの24時間尿中排泄量と摂取量との関連を断面的研究により調べた。連続4日間で摂取したすべての食糧を秤量法により正確に記録し、4日目に24時間尿のサンプルを採取し、水溶性ビタ ミン量を測定した。水溶性ビタミン尿排泄量と採尿日数日間の平均摂取量との間には、ビタミンB12を除き正の有意な相関が認められた。 (ビタミン B1: r = 0.42, P < 0.001; ビタミンB2: r = 0.43, P < 0.001; ビタミンB6: r = 0.40, P < 0.001; ビタミンB12: r = 0.06, P = 0.493; ナイアシン: r = 0.35, P < 0.001; ナイアシン当量: r = 0.33, P < 0.001; パントテン酸: r = 0.47, P < 0.001; 葉酸: r = 0.27, P = 0.001; ビタミンC: r = 0.44, P < 0.001) 尿排泄量と尿排泄率から計算した水溶性ビタミン推定平均摂取量は、採尿日3日間の平均食事摂取量の91–101%の範囲(ビタミンB12 (61%)を除く)であった。実験室レベルとは異なり、様々な交絡因子がからみ合うフィールドワーク研究、すなわち、自由に生活する日本の大学生において、水溶性ビタミン尿排泄量が摂取量を反映していることが示された。 第二章 自由に生活する10~12歳の日本の小学生114人を対象として、水溶性ビタミンの24時間尿中排泄量と摂取量との関連を大学生と同様の方法により調べた。水溶性ビタミン尿排泄量と採尿日数日間の平均摂取量との間には、ビタミンB12を除き正の有意な相関が認められた。(ビタミン B1: r = 0.42, P < 0.001; ビタミンB2: r = 0.43, P < 0.001; ビタミンB6: r = 0.49, P < 0.001; ビタミンB12: r = 0.19, P = 0.149; ナイアシン: r = 0.32, P < 0.001; ナイアシン当量: r = 0.32, P < 0.001; パントテン酸: r = 0.32, P < 0.001; 葉酸: r = 0.27, P = 0.001; ビタミンC: r = 0.39, P < 0.001) 水溶性ビタミン推定平均摂取量は、採尿日3日間の平均食事摂取量の97–102%の範囲(ビタミンB12 (79%)を除く)であった。自由に生活する日本の小学生において、水溶性ビタミン尿排泄量が摂取量を反映していることが示された。 第三章 自由に生活する70~84歳の日本の女性高齢者37人を対象として、水溶性ビタミンの24時間尿中排泄量と摂取量との関連を大学生と同様の方法により調べた。水溶性ビタミン尿排泄量と採尿日数日間の平均摂取量との間には、ビタミンB12を除き正の有意な相関が認められた。(ビタミン B1: r = 0.62, P < 0.001; ビタミンB2: r = 0.57, P < 0.001; ビタミンB6: r = 0.37, P < 0.005; ビタミンB12: r = 0.01, P = 0.936; ナイアシン: r = 0.54, P < 0.001; ナイアシン当量: r = 0.54, P < 0.001; パントテン酸: r = 0.59, P < 0.001; 葉酸: r = 0.55, P = 0.001; ビタミンC: r = 0.53, P < 0.001) 水溶性ビタミン推定平均摂取量は、採尿日3日間の平均食事摂取量の96–107%の範囲(ビタミンB12 (65%)を除く)であった。自由に生活する日本の高齢者において、水溶性ビタミン尿排泄量が摂取量を反映していることが示された。 要約 1. 自由に生活している大学生・小学生・高齢者を対象として、7種類の水溶性ビタミン(ビタミンB1, B2, B6, ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビタミンC)について、24時間尿排泄量と摂取量との間に正の有意な相関があることを明らかにした。 2. 水溶性ビタミン尿排泄量は、採尿当日のみならず,採尿日数日間の食事摂取量を反映することが明らかになった。 3. 「尿」と「尿排泄率」から算出した水溶性ビタミン推定平均摂取量と、採尿日3日間の水溶性ビタミン平均摂取量との間に正の有意な相関があることを確認した。 結論 􀁺 実験室レベルで開発された「尿を用いる水溶性ビタミンの栄養評価」をフィールドワークへ活用することの妥当性が確認できた。 􀁺 自由に生活するヒトにおいても定量的な生体情報「尿」を指標として客観的な栄養評価が行えることが証明され、日本人の行動変容を促す栄養教育システムの開発に活用できる可能性があることが示された。
内容記述: 人文課第13号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201k043
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/615
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