The University of Shiga Prefecture Repository >
環境科学部・環境科学研究科(School of Environmental Science/Graduate School of Environmental Science) >
博士学位論文 >

このアイテムの引用には次の識別子を使用してください: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/508

タイトル: 食用担子菌を用いた農業副産物の利用性改善に関する研究
著者: 三木, 聡子
発行日: 2006/03/23
抄録: 穀物や畜産業の生産現場からは大量の農業副産物(廃棄物)が排出される.排出された農業副産物は焼却やすき込み,あるいは堆肥化といった方法で土壌に還元される.しかしながら,これらの処理方法は,大量の二酸化炭素をはじめ環境に有毒なガスを排出するため,時には大気汚染の原因になる.一方,様々な農業副産物を用いて白色腐朽性および腐植性の食用担子菌(キノコ)の栽培が行われてきた.農業副産物を用いたキノコの栽培は,農業副産物の量を減らし,食物を生産することに意義がある.本研究の目的は,無殺菌ワラを用いたキノコの栽培,キノコを栽培した廃培地の飼料化および使用済み家畜敷料を用いたキノコの栽培を検証し,農業副産物の利用性改善に必要な知見を得ることである. はじめに,無殺菌のイナワラおよびコムギワラを用いて,白色腐朽性のキノコであるトキイロヒラタケを培養し,菌糸の生育に適当な培養条件を検討した.イナワラおよびコムギワラを細切したものと粉砕したものを用意し,菌糸の生育と培地の処理について検討したところ,ワラを粉砕することによって雑菌の繁殖を抑え,トキイロヒラタケの菌糸の生育が助長されると考えられた.しかし,粉砕処理は細切処理よりもエネルギーの投入が大きいため,粉砕処理に代わる方法の検討が必要であった.そこで,細切した無殺菌コムギワラを培地に用いて,菌糸の生育に及ぼす培地の充填量,培地の殺菌の程度,種菌量および培養温度について検討した.それぞれの試験結果から,トキイロヒラタケを無殺菌のコムギワラで栽培するには,充填量120g/850ml,種菌量10%,培養温度20~24℃が適当であると考えられた.また,培地に熱水や温水を注水することは,雑菌の繁殖を抑制する簡易な殺菌方法として有効であることがわか った. 次に,廃培地の反芻胃での消化性について検討するために,めん羊の第一胃内溶液を使ったインビトロでの消化試験を行った.無殺菌でトキイロヒラタケを培養した粉砕イナワラおよびコムギワラの廃培地では,植物細胞壁の消化性が改善されていた. 一方,ウシの繊維質飼料であるコーンコブミールを培地に用いて,エリンギおよびトキイロヒラタケを栽培した試験では, 培養期間が112 日以上で,キノコが収穫された廃培地の消化性が改善され,栄養価も向上したと考えられた.さらに,培養期間がコーンコブミール培地の消化性に及ぼす影響について検討 した.培地の消化性は,種菌接種後0 日から115 日にかけて上昇した.115 日から175 日にかけても上昇したが,有意な差は認められなかった. したがって,本試験の培養条件では,種菌 接種後115 日目の培地が飼料に適していると考えられた. また,腐植性のキノコであるツクリタケの栽培が,元来は馬の厩肥を用いて栽培されていたことから,キノコ栽培の培地としての使用済み家畜敷料の利用性について検討した. オガクズを含む肉用牛の使用済み敷料およびコムギワラと化学肥料から,それぞれ堆肥(敷料堆肥および合成堆肥)を作成し,それらにツクリタケを栽培した.それぞれの堆肥からは市販されているものと同様の良質なキノコが収穫された.キノコの総収量は敷料堆肥よりも合成堆肥の方が多かったが,合成堆肥では4週間目の収量がピークであり,その後減収したのに対して,敷料堆肥では増加する傾向にあった.さらに栽培期間を継続していれば,敷料堆肥からの収量は合成堆肥を上回ったものと思われる.したがって,肉用牛の使用済み敷料から作った堆肥は,ツクリタケ栽培の培地として優れたものであると考えられた. 肉用牛の使用済みの敷料は,それぞれの畜産農家で堆肥化され,乾燥牛糞として販売されている.そこで,肉牛肥育農家からオガクズを敷料としている乾燥牛糞を入手し,ツクリタケの栽培を試みた.いずれの乾燥牛糞でもツクリタケの菌糸は成長し,キノコが収穫された.子実体収量が最も大きかったのは,オガクズの混入割合が低く,好気性発酵(堆肥化)の時間が短かった乾燥牛糞であった.また,栽培後の乾燥牛糞は,ツクリタケ菌糸の分解作用によって腐朽が進んでいることがわかった. 農地では,一年を通してバイオマス生産が行われる.これまで,農業副産物として得られたバイオマスは,利用されても,キノコ栽培用の培地あるいは家畜の飼料としての一次利用に留まっていた.また,畜産業から生じる使用済みの敷料は,堆肥化されて肥料としての一次利用に留まっていた.しかし,キノコ生産業者と家畜生産者が連携すれば,農業副産物は資源として再利用できるので,バイオマス資源の有効利用とゴミ減量化が達成でき,キノコ栽培は食資源としてのエネルギー回収だけでなく,環境に優しい堆肥化法としての可能性もあるものと考えられる.
内容記述: 環課第4号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201k011
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/508
出現コレクション:博士学位論文

このアイテムのファイル:

ファイル 記述 サイズフォーマット
24201k011_yoshi.pdf博士論文 要旨110.78 kBAdobe PDF見る/開く

このリポジトリに保管されているアイテムは、他に指定されている場合を除き、著作権により保護されています。

 

滋賀県立大学図書情報センター - ご意見をお寄せください   DSpace Softwareについて