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タイトル: Physiological responses in crustacean zooplankton to abiotic and biotic stresses, especially lowering pH and crowding
その他のタイトル: 甲殻類動物プランクトンにおける生物的および非生物的ストレスに対する生理的応答,特にpHの低下と混み合いについて
著者: GAO, HUANAN
キーワード: Zooplankton
Cladocera
copepod
metabolism
respiration
growth efficiency
starvation
food shortage
crowding
population density
acidification
acute acidic stress
proton concentration
swimming behavior
freshwater lake
発行日: 2022/09/30
抄録:  Zooplankton play a key role in aquatic food webs as both primary consumer and secondary producer. Physiological activities, such as metabolism, ingestion, growth and production, contribute to total energetic flux in an ecosystem. Zooplankton metabolism through biological processes were largely influenced by environmental factors including temperature, pH, food conditions, and population density, in turn may influence population dynamics. Therefore, clarifying the process that control the zooplankton metabolism is a major objective for understanding aquatic ecosystem productivity. Cladocerans and copepods are two important components of zooplankton in lake ecosystems, and can be good candidates to clarify responses of metabolism to the different environmental parameters in aquatic organisms. In this study, I examined effects of both abiotic and biotic environment factors, i.e., starvation, food shortage, crowding, acidification, low temperature, on respiration rate and life history traits in three different zooplankton taxa, to clarify how zooplankton respond to these environmental stresses. In cladoceran Daphnia magna, metabolic rate as respiration rate decreased under starvation conditions, especially for juveniles. The starvation resistance ability largely depends on the body size. In acclimatizing food limited conditions, metabolic rates were significantly depressed with somatic growth and reproduction, and consequently net growth efficiency decreased. D. magna also showed lower metabolic rates in the crowded condition at both high and low temperatures with interaction effects. The density-mediated depression of metabolic rate may be related to lowering food uptake, and the crowding effect may be decelerated at cold water. Acidic stresses to survival and metabolic rates varied among the three zooplankton taxa, Daphnia pulicaria, Eodiaptomus japonicus and Cyclopoida spp.; D. pulicaria did not respond acidic stress while two copepod taxa reduced respiration rates in low pHs, <7. This depression in the copepods might be related to lowering swimming activity under lowering pH. These results will provide some metabolic parameters of zooplankton under these abiotic and biotic environmental stresses which are essential for learning and predicting the quantic ecological processes.  代謝速度は動物の環境変化に対する生理学的応答を理解する上で重要である。本論文で、申請者は動物プランクトンの代謝を呼吸速度として測定し、いくつかの非生物的および生物的環境因子に対してどのように応答するのか、非接触型の溶存酸素測定装置を用いて詳細に調べた。動物プランクトンの呼吸速度は溶存酸素量の変化量で求められてきたが、体サイズが小さいため、精度良く測定結果を得るためには多くの実験個体(しばしば100個体以上)を必要とした。しかし、近年多く用いられるようになった非接触型酸素測定装置は、容器内の酸素濃度を光学的に容器の外から測定することが可能であり、1~数個体の実験動物を用いて精度良く、連続的に溶存酸素量の変化を捉えることができる。第1章では飢餓(無給餌)に対する急性応答、第2章では餌不足に対する慢性応答について明らかにした。第3章では個体数密度と水温が呼吸速度に与える共役的な影響について、そして、第4章では低pHに対する応答について調べた。以下にそれぞれの章における研究の概要を述べる。  第1章では、実験動物としてしばしば用いられる枝角類Daphnia magnaを用いて、これが飢餓に対してどのように応答するのか調べるため、2~24時間あるいは2~7日の飢餓に曝した後の呼吸速度を測定した。体炭素重量で標準化した比呼吸速度(Rw)は、若齢(3日令)個体では、12時間以内の飢餓では0.014h⁻¹だったものが、13時間以上の飢餓ではおよそ1/2の0.009h⁻¹まで低下した。一方、成体(6日令)では、24時間以内の飢餓ではRwは変化せず、平均0.009h⁻¹であり、それ以上の期間、飢餓に曝された後では徐々に低下した。一方で、体重の変化はこれより遅れて認められ、若齢期では24時間以内に体重変化はみられず、成体期では3日目以降に体重の減少が見られた。これらのことは、D.magnaが飢餓に対して、まず呼吸速度を低下させて応答し、次に成長および貯蔵エネルギーを使うことで応答することを示唆した。従って、この発育段階間に見られた飢餓期間に対する応答の差は、体重差と貯蔵エネルギー量の差と考えられた。  第2章では、同じくD.magnaを用いて、呼吸速度と共に成長と再生産を測定することで餌不足による慢性影響が代謝速度に与える影響を調べた。餌密度の変動と代謝物質の蓄積による効果を取り除くために、フロースルー装置を用いて、餌が潤沢な条件(5x10⁵cells mL⁻¹or20.5 µgCmL⁻¹)と餌不足条(2.5x10³ cells mL⁻¹or0.1025 µgCmL⁻¹)で飼育し、2日令から18日令まで2日間隔で呼吸速度、体サイズおよび体乾燥重量を測定し、成熟後は抱卵数を計数した。体重は4日令までは両方の餌条件で差は見られなかったが、6日令以降は餌不足条件で有意な低下が認められた。1回目の産卵数は11~12eggsで、どちらの餌条件でも同じだったが、2回目以降の産卵では餌潤沢条件では積算産卵数が96eggsまで 増加したのに対して、餌不足条件では22eggs程度であり、有意に低下した。呼吸速度は、餌潤沢条件でば体重に依存して0.452から2.468 µLO₂ ind.⁻¹h⁻¹まで変動したのに対して、餌不足条件では体重にかかわらず低い値を示し、0.281~0.627 µLO₂ ind.⁻¹h⁻¹で変動した。純成長効率(純生産量/同化量)を計算すると、若齢期(4日令まで)では餌条件による差は見られず65~ 75%だったが、成体期(6日令)以降は、餌十分条件で60%であったのに対して餌不足条件で70%と有意に高くなった。これは、D.magnaが餌不足環境に応答して呼吸による炭素ロスを低下させ、純生産への投資を増加させたためと解釈された。  第3章では、混み合いが代謝速度に与える影響を調べるため、D.magnaを用いて3つの個体数密度(1、10、20ind.50-mL⁻¹)と2つの温度条件(10と20℃)で呼吸速度を測定した。呼吸速度は1個体で測定した結果より2つの混み合い区で有意に低下したが、その程度は20℃でより大きかった。Q₁₀値は、個体数密度が1、10、20ind.50-mL⁻¹で2.29、1.98、1.63であり個体数密度に依存して変化することが分かった。先行研究によって個体数密度が増加すると摂食速度が低下することが知られており、混み合い区で見られた呼吸速度の低下は、同化量の低下を通して特異動的作用(SDA)が低下したことに起因すると考えられた。  第4章では、低pHに対する琵琶湖の主要甲殻類動物プラシクトン3種の応答について調べた。琵琶湖北湖沖帯定点より、Eodiaptomus japonicus、Daphnia pulicaria、Cyclopoida spp.を採集し、餌としてChlamydomonas reinhardtii あるいはCryptomonas tetrapyrenoidosaを充分量与えて実験室にて飼育した。これらに対して、まず低pHの急性効果を調べた。3種のプランクトンを10℃と20℃でpH4.0~8.0に調整した試験水にて無給餌で飼育し、致死的pHを24時間後のLD₅₀として求めた。プロビット変換した生残率より求めたLD₅₀は、E.japonicus、D.pulicaria、Cyclopoida spp.でそれぞれ10℃では5.3、4.5、4.4、20℃では5.2、4.5、4.2であり、低pHに対してE.japonicusが最も低い耐性を、そしてCyclopoida spp.が最も強い耐性を示した。また、どの種でもLD₅₀は10℃で若干高く、低pH耐性は低温で低下することが分かった。呼吸速度は、D.pulicariaではどちらの温度でもpH4.6~8.0で変化はみられなかったが、E.japonicusとCyclopoida spp.ではpH8.0に比べてpH7.0以下では有意な低下が認められた。別途行った遊泳速度に対するpHの影響に関する実験で同様の傾向が認められたことから、低pHによる呼吸速度の低下は遊泳速度の低下に関連しているものと考えられた。
内容記述: 環課第66号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201k126s
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/795
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