|
The University of Shiga Prefecture Repository >
工学部・工学研究科(School of Engineering/Graduate School of Engineering) >
博士学位論文 >
このアイテムの引用には次の識別子を使用してください:
http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/754
|
タイトル: | 修飾セルロースナノファイバーの調製と環境調和型複合材料の開発 |
その他のタイトル: | Study on development of modified cellulose nanofibers and environmentally friendly composite materials. |
著者: | 杉本, 雅行 |
発行日: | 2020/03/20 |
抄録: | 2015年に国連で合意されたSDGs(Sustainable Development Goals)にも多くの環境的側面が取り上げられているように, 今後も世界が持続的に発展していくためには温室効果ガスである二酸化炭素の排出を減らすことが肝要であり, そのための技術開発が望まれている. このような社会的背景の中, 解決策の1つとしてバイオマスの利用が進められており, 特に近年では地球上最大のバイオマスであるセルロースをナノベレルにまで解繊したセルロースナノファイバー(CNF)を樹脂補強材として応用するための研究が盛んに行われている. しかしながら, CNFは比表面積が大きく, 繊維表面に多数のヒドロキジ基を有するため樹脂との親和性が低く, 樹脂中に均一に分散させることが困難である. また, 均一に分散できたとしてもCNF本来の補強効果を十分に発現させることは難しい.
本論文はカルド構造を有するフルオレン誘導体に着日し, これをCNF表面に化学修飾することで, 樹脂に対する優れた分散性と界面補強性を兼ね備えたCNFを開発し, 低環境負荷な複合材料を創り上げることを目的として行った研究をまとめたものであり, 全6章から成る.
第1章では本研究の背景と目的を明示し, 人類が直面する地球環境問題並びにエネルギー問題に関して述べ, これを解決するために近年注目されているバイオマス由来の機能性材料であるCNFの特徴と課題を整理した. その上で, カルド構造を有するフルオレン誘導体が, このCNFの課題である樹脂への分散性と界面補強性を同時に解決し得る理想的な化合物の1つであり得ることを論じた.
第2章では, 第1章で論じた本研究の方向性に基づいて, CNFにカルド構造を有するフルオレン誘導体を修飾する合成プロセスの開発と, 疎水性並びに溶媒分散性に関する評価を行った. 合成プロセス開発の結果得られたフルオレン誘導体で修飾されたセルロナノファイバー(FLCF)は, ゼータ電位測定から疎水化されていることを明確にし, 乾燥状態でも凝集することなく広範な極性溶媒に対し再分散可能であることを明らかとした. 更に密度汎関数強束縛法によるシミュレーション結果から, フルオレン誘導体はCNF表面でフルオレン環が繊維表面に露出する形で安定化することを見出し, 疎水化効果と安定構造との相関を推察した.
第3章では, 第2章で得られたFLCFと, 一般にバイオマスを原料として製造されるポリ乳酸からなる複合材料の調製を行い, FLCFの複合材料中での分散性とマトリクス樹脂の補強性についてレオロジー的, 力学的, 熱的な観点から評価した. その結果, FLCFは未修飾のCNFと比較してPLA中に良好に分散すること及び, 特にガラス転移温度以上の高温領域において優れた界面補強性を有することを明らかとした. この補強効果は動的粘弾性の結果よりFLCFがPLAの分子運動を強く拘束することによって生じるものであることを推察した. また, 類似構造でありフルオレン環を持たない分子である2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロバンを修飾したCNF (BisA CNF)との複合材料と比較したところ, FLCFはBisA CNFよりも強い界面補強効果を有していることがわがり, フルオレン環の存在やカルド構造が肝要であることを示し, 本論文のコンセプトを実証した.
第4章では, FLCFの樹脂補強材としての汎用性を評価するために, 自動車用途等の耐熱性が求められる箇所で使用され, 近年バイオ々ス化が進んできているポリアミド樹脂との複合化を行い, FLCFの分散性や界面補強性についてレオロジー的, 力学的, 熱的な観点から解析を行うことにより評価した. 更にX線CTやFE-SEM等を用いることで分散性や補強性の違いを視覚的に把握できる方法でも評価することにより, CNFとFLCFの差異について詳細な考察を行った. その結果, FLCFは第3章で評価したPLAのみならず, PAにも良好に分散し, 未修飾のCNFと比較して強い界面補強効果を有することを明らかとした. 更にFLCFは動的粘弾性測定のガラス転移温度における活性化エネルギーの算出結果から, 非晶部主鎖(エチレン鎖)のミクロブラウン運動を強く拘束することを明らかとした. この結果はポリエチレン等に対してもFLCFが補強 性を有する可能性を示唆するものであり, PAを含めたFLCFの多様な樹脂への汎用性を示すことができた.
第5章では第3章並びに第4章で明らかとしたFLCFの高温域での樹脂のレオロジー特性の改質効果をPAの発泡成形に応用することを検討した. その結果, FLCFとPAの発泡成形体はPAのみと比較して微細な気泡を形成すること並びに力学的強度も向上させることを明らかとした. この現象は一軸伸長粘度測定から, FLCFの添加量に依存して引張過程での粘度の上昇が生じることと相関があることを推察した.
第6章では本研究で得られた知見を総括し, 今後のセルロースナノファイバーの研究開発の方向性や可能性について論じた. |
内容記述: | 工課第17号 |
NII JaLC DOI: | info:doi/10.24795/24201k114 |
URI: | http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/754 |
出現コレクション: | 博士学位論文
|
このリポジトリに保管されているアイテムは、他に指定されている場合を除き、著作権により保護されています。
|