The University of Shiga Prefecture Repository >
人間文化学部・人間文化学研究科(School of Human Cultures/Graduate School of Human Cultures) >
博士学位論文 >

このアイテムの引用には次の識別子を使用してください: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/627

タイトル: 水溶性ビタミンの栄養評価を目的としたヒト24時間尿の利用に関する方法論的研究
その他のタイトル: Methodological studies on the use of human 24-hour urine for evaluating nutritional status of water-soluble vitamin
著者: 福渡, 努
発行日: 2008/09/30
抄録: 緒言 各栄養素を適切に摂取することは,健康な個人または集団が健康を維持・増進するうえで重要である.しかし, 水溶性ビタミンの栄養評価を行ううえで,有効な生化学的指標が確立されていない,精度の高い代表的な摂取量を求めることは容易ではない,食品や個人の違いによって利用率が異なるなどの問題点があるため,食事調査のみに基づいた水溶性ビタミンの栄養評価を行わざるを得ないのが現状である.従って,よりよい水溶性ビタミンの栄養評価および栄養指導を行うためには,個人または集団の栄養状態を客観的に評価できる新たな生化学的指標を確立する必要がある. 本研究では,新たな水溶性ピタミンの生化学的指標を確立することを目的として,水溶性ビタミン摂取量を管理したヒト介入試験を行い, 24時間尿を利用した水溶性ビタミンの栄養状態および摂取量の評価法について検討した.ヒト介入試験で得た関連性が人間集団においても観察されるか明らかにすることを目的として,女子学生288名を対象とした観察的疫学研究を行い,人間集団における水溶性ビタミンの摂取量と尿中排泄量との関係について検討した.水溶性ビタミン摂取量をより高い精度で評価する方法を確立することを目的として,食事中のB群ビタミンの相対利用率を簡便に算出する方法について検討した. 1. 24時間尿を利用した水溶性ビタミンの栄養状態および摂取量の評価法の確立 1-1. 尿中水溶性ビタミン排泄量におよぽす因子の検索  水溶性ビタミン混合を摂取させた健康な女子学生54名から24時間尿を採集し,24時間尿中の各水溶性ビタミン量と身長,体重,体表面積,尿中クレアチニン,尿量との相関を調べた.ビタミンB12排泄量と尿量との間にのみ非常に強い相関が認められた水溶性ビタミン混合の摂取により,ビタミンB12を除く全ての水溶性ビタミンの尿中排泄量は著しく増加した.これらの結果から,ビタミンB12の評価にはヒト24時間尿を利用できないこと, ビタミンB12を除く水溶性ビタミンの尿中排泄量には身体特性,尿中クレアチニン,尿量は影響しないことを明らかにした. 1-2. ヒト介入試験における水溶性ビタミンの摂取量と尿中排泄量との関係 健康な女子学生6人に様々な量の水溶性ビタミン混合を摂取させ,摂取量と尿中排泄量との関係について調べた.ビタミンB12を除く水溶性ビタミンの尿中排泄最は投与量依存的かつ直線的に増大し,摂取量との間に非常に強い正の相関が認められた.トリプトファンからのニコチンアミド生合成は水溶性ビタミン混合摂取の影署を受けなかった.これらの結果から,水溶性ビタミン摂取量を管理した条件では,ヒト 24 時間尿を利用することにより, ビタミンB12を除く水溶性ビタミンの栄養状態および摂取量を評価することができることを明らかにした. 2. 観察的疫学研究における水溶性ビタミンの摂取量と尿中排泄量との関係  自由に生活する人間集団においても,ヒト24時間尿を利用して水溶性ビタミンの栄養評価を行うことができるか検討した.栄養士関連施設に在藉する女子学生288名を対象とし, 自記式食事歴法質問票(DHQ)によって算出した習慣的な水溶性ビタミン摂取量と尿中水溶性ビタミン排泄量との関係について調べた.ビタミンB12とビオチンを除く水溶性ビタミンについて,尿中排泄量と摂取量との間に正の相関が認められた.水溶性ビタミン摂取量を摂取エネルギー量当りの値として補正すると,ピタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン, パントテン酸,ビタミンCについて,より強い相関が認められた.タンパク質摂取量当りの値として補正すると,ビタミンB6について,より強い相関が認められた.これらの結果から, 栄養関連学科に在籍する女子学生に対しては,ヒト24時間尿を利用することにより,最近 1 ヶ月間の習慣的な水溶性ビタミンの摂取量および栄養状態を評価できることを明らかにした. 3. 食事中のB群ビタミンの相対利用率の算出法の確立 ヒト24時間尿を利用して,一般的な食事(規定食)中のB群ビタミンの相対利用率を測定した.健康な女子学生6人に,B群ビタミン混合剤を付加した,あるいはしていない規定食を4 日間摂取させ,24時間尿中のB群ビタミン排泄量を測定した遊離型B群ビタミンの排泄率に対する規定食摂取時の排泄率の相対比を規定食中のB群ビタミンの相対利用率(%)として求めると,一般的な食事のB群ビタミンの相対利用率は64~73%であった.以上より,尿中B群ビタミン排泄量を利用して,食事中のB群ビタミンの相対利用率を簡便に算出する方法を確立した. 要約 1.水溶性ビタミン摂取量を管理したヒト介入試験を行い,ビタミンB12を除く水溶性ビタミンについて,尿中排泄量は摂取抵と非常に強い正の相関を示すことを明らかにした. 2.自由に生活する栄養関連学科女子学生288名を対象とした観察的疫学研究を行い,ビタミンB12とビオチンを除く水溶性ビタミンについて,尿中排泄量は最近1ヶ月間の習慣的な摂取量と正の相関を示すことを明らかにした. 3.水溶性ビタミン摂取量を管理したヒト介入試験を行い,ヒト24時間尿を利用して,食事中のB群ビタミンの相対利用率を簡便に算出する方法を確立した. 結論 ・水溶性ビタミンの栄養評価を目的としたヒト24時間尿の利用に関する方法論を提案した. ・特定の集団にこの方法論を実践すれば,水溶性ビタミンのよりよい栄養評価,栄養指導をその集団に対して行うことができる可能性を示した.
内容記述: 人文論第9号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201o013
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/627
出現コレクション:博士学位論文

このアイテムのファイル:

ファイル 記述 サイズフォーマット
24201o013_yoshi.pdf博士論文 要旨111.51 kBAdobe PDF見る/開く

このリポジトリに保管されているアイテムは、他に指定されている場合を除き、著作権により保護されています。

 

滋賀県立大学図書情報センター - ご意見をお寄せください   DSpace Softwareについて