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タイトル: Studies on the microbial glycosidases acting on indigestible carbohydrates
著者: 吉田, 永史奈
発行日: 2012/03/16
抄録: 緒言 食物繊維は、ヒトの消化酵素では分解されない食品中に含まれる難消化性成分であり、従来消化されない役に立たないものとされてきた。しかし、後にその有用性が明らかとなり、現在では日本人の食事摂取基準において栄養素の1つとされている。また、腸内善玉菌を増やす効果をもつプレバイオティクスとして知られており、さまざまな生理活性作用が期待され、特定保健用食品としても利用されている。難消化性オリゴ糖も同様に、大腸でビフィズス菌や乳酸菌を特異的に増殖させ、宿主であるヒトの健康に好影響を与えることが知られており注目を集めている。 そこで、本研究ではこれらの難消化性糖質を利用し生育可能な微生物に着目し、それらの持つ糖質加水分解酵素について研究を行った。 1.Kluyveromyces marxianus由来β-グルコシダーゼ(KmBglI)の機能と構造の解析 K.marxianus は、ヨーグルトやチーズなどの乳製品に存在し、食品工業において乳糖を分解するラクターゼの生産に利用されている酵母である。本酵母の資化能を探索している過程で、本酵母がグルコースのみならずセロビオース(Glcβ1-4Glc)やラミナリビオース(Glcβ1-3Glc)を単一炭素源として生育可能であることを見いだした。これらを分解する糖質加水分解酵素をデータベースにて検索したところ、本酵母がglycoside hydrolase family 3 (GH3) に属するβ-グルコシダーゼを保有していることが明らかとなった。GH3は約3000のタンパク質が分類され、糖転移活性を有している。そのため、オリゴ糖合成への可能性がありGH3に属する酵素の性質解明は重要である。 本酵素の一次構造上の特徴としては、GH3コアドメイン中にPA14と呼ばれる約150アミノ酸からなるドメインが挿入されていることがあげられるが、詳しい性状解析は未だ行われていない。本研究では、K. marxianus NBRC1777株よりβ-グルコシダーゼ(KmBglI)の遺伝子を単離、大腸菌にて大量発現して精製を行い、酵素化学的性質の決定を行った。その結果、本酵素は分子量約39万、ホモテトラマー構造をとり、para-nitrophenyl (pNP)-β-D-グルコースに対して最も良く作用し、その5%の効率でpNP-β-D-キシロースも分解した。天然基質ではラミナリビオースを良い基質とする一方、ラミナリトリオースに対してはその活性が1%以下に低下した。 本酵素の構造機能相関を明らかとする目的でX線結晶構造解析を行い、グルコース複合体構造を分解能2.55Åで決定した。KmBglIの基質結合部位はPA14ドメイン上のループで塞がれており、二糖や配糖体などの短い基質の分解に適したポケット型の構造を有していた。このループを欠失した変異体を解析したところ二糖に対する高い特異性を失ったことから、KmBglIはPA14ドメインの付加によって菌体内に存在し得る二糖・配糖体の分解に特化した構造を獲得していることが明らかとなった。またKmBglIのN末端ドメインはオオムギ由来β-グルカナーゼ(ExoI)のものと異 なり、1-2番目のαヘリックスが欠失したββ(β/α)6フォールド(2番目のβ-シートは逆平行)であり、GH3酵素の構造の多様性が示唆された。 2.Bifidobacterium longum subsp. infantis ATCC15697株のヒトミルクオリゴ糖(HMO)代謝経路の解明 母乳栄養児の腸管におけるビフィズス菌の優先的な増殖には、人乳に含まれるオリゴ糖(HMO)が関与すると考えられている。近年ゲノム解読がなされたB. infantis ATCC15697株は、HMOクラスターと呼ばれる遺伝子群を有し、HMOを単一炭素源として生育できることが報告されている。本菌は、HMOを直接菌体内に取り込み、エキソ型グリコシダーゼによって分解すると推定されているが、酵素化学的な証明は行われていない。そこで、本研究ではB. infantisのHMO代謝経路を解明するために、クラスター内の種々の糖質分解酵素を発現させ特異性を調べた。その結果、クラスター内のβ-ガラクトシダーゼホモログ(Blon_2334、GH2)はラクトースおよび2型糖鎖構造(Galβ1-4GlcNAc-)を加水分解するものの、HMOの主要骨格である1型糖鎖構造(Galβ1-3GlcNAc-)には作用しないことを見出した。そこで、ゲノム上に存在するβ-ガラクトシダーゼホモログを探索したところ、クラスター外のBlon_2016(GH42)によりコードされる酵素が1型糖鎖に作用する新規なβ-1,3-ガラクトシダーゼであることを明らかとした。また、qRT-PCRによりBlon_2334およびBlon_2016の発現が確認された。B. infantisは、1型、2型糖鎖構造に特異的な2種類のβ-ガラクトシダーゼを作用させ、HMOを分解していることを発見した。興味深いことに、1型糖鎖に作用する新規β-1,3-ガラクトシダーゼ遺伝子は、乳幼児の腸内に存在する他のビフィズス菌にも存在していた。 結論 ・K. marxianus NBRC1777株由来β-グルコシダーゼが2糖特異的に作用することを酵素化学的諸性質の解析により見出し、立体構造との相関を明らかにした。 ・乳幼児の腸内菌叢において優勢となるビフィズス菌種B. longum subsp. infantis ATCC15697株の1型ヒトミルクオリゴ糖代謝経路を酵素・遺伝子レベルで解明した。
内容記述: 人文論第12号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201o020
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/621
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