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タイトル: | 地域用水利用に及ぼす水質の影響と水質の改善手法に関する研究 |
著者: | 古川, 政行 |
発行日: | 2005/03/23 |
抄録: | 農業用水は、農地への灌漑という目的以外に、住民にとっての身近な用水源としての側面を有し、洗い物や水遊び、防火、消流雪などに幅広く利用されてきた。このような身近な用水源を「地域用水」と呼んでいる。しかし、高度経済成長に伴う農村の生活様式の変化および混住化の進展などによって、地域用水の利用範囲は狭くなり、水路にフタをされるところも見られるようになった。その一方で、環境問題がクローズアップされてきたことに合わせて、地域用水の機能の回復を図る動きが見られるようになった。
本論文は、地域用水の機能や役割を充分に発揮させるため、その環境を整備する上で重要な項目である水質に注目して、水質の悪化が地域用水利用に及ぼす影響を明らかにするとともに、水質改善の方策として浄化池を取り上げ、その効果について評価した。なお、本論文は緒論としての 1 章と本文 4 章および結論で構成されている。
第 1 章では、緒論として、地域用水の定義を紹介し、地域用水が注目されるようになった背景とそれが抱える問題点を述べ、本論文の構成を説明した。
第 2 章では、まず、地域用水の利用状況を明らかにするために、集落内の踏査とアンケ ート調査を行った。その結果、用水の利用目的については、「消流雪」、「庭木への散水」、「農機具洗浄」等、水質に対してあまり神経質にならなくてよい用途の回答比率が高くなり、これに対して食器洗いや洗濯等の回答比率は低くなった。地域用水の利用頻度に関しては、用水を頻繁に利用する人の割合が集落間で異なっていた。また、用水をあまり積極的に利用しない理由については、「水質が悪い」、「衛生上の問題」を挙げる割合が高く、衛生面を含めて水質が地域用水の利用に及ぼす影響が大きいことが伺われた。
次に、地域用水の水質を集落間で比較したところ、用水の利用頻度が比較的低い集落の水質は、利用頻度の高い集落より劣る結果となり、水質の悪化は地域用水の利用頻度に影響を及ぼしていることを明らかにした。また、各種水質基準を参考にして「地域用水の機能を充分発揮させるための水質目標」を提案した。一方、集落の出入り口で水質を比較した結果、集落通過時に水質が悪化している状況についても解明した。
第 3 章では、地域用水が集落を通過するときの水質変化と、それに伴う地域用水の利用状況の変化について調査を行った。水質については、24 時間連続調査を行ったところ、流入地点と流出地点の濃度差が大きい時間帯と水がよく使われる時間帯が概ね一致し、家庭雑排水が水質悪化の原因であることを明確にした。次に、地域用水の利用状況についてヒアリングを行い、その結果を集落内水路の上流部、中流部、下流部に分けて比較したところ、下流へいくほど用水の利用頻度が下がっていた。上水道設置以前は上下流間での利用頻度に差異は見られず、利用目的も「風呂」、「洗濯」、「飲料水」等、生活用水として利用されていたことが判明した。また、歴史的には水道の設置も利用頻度の低下を招く一因にな ったことを明らかにした。
第4 章では、地域用水の水質を改善する方策の一つとして、浄化池の評価をおこなった。浄化池の水質改善能力について実験するには、水質のシミュレーションモデルが必要であるが、小さな池沼を対象とした水質モデルは国内ではあまり見られない。そこで、滋賀県彦根市の野田沼内湖を対象に水質モデルを作成し、そのモデルを浄化池の水質シミュレー
ションモデルとすることにした。野田沼の水質モデルは、タンクモデルと L-Q 式から成る「流入負荷予測モデル」と生態系モデルから成る「湖内水質モデル」の 2 つから構成される。水質モデルを用いて野田沼の水質を再現したところ、内部生産による SS や COD の上昇を再現することができた。
第 5 章では、まず、前章で作成した水質モデルを用いて、野田沼内湖の水質改善能力を向上させるための方策として、内部生産を抑制することと、降雨時の負荷削減効率を上げることについて数値実験を行った。内部生産の抑制については、循環灌漑施設の稼動期間
を延長させることによって藻類の増殖を抑え、COD の浄化量を約 1、300kg 増加させ得ることが判明した。降雨時の負荷削減については、野田沼の流入地点と流出地点に堰を設置
してファーストフラッシュを沼に閉じ込めることによって、負荷の削減量を 20~90%増加
させ得ることができた。
次に、地域用水の水質改善の方策として、集落の上流に浄化池を設置した場合を想定して数値実験を行った。その結果、SS については沈降によって比較的高い改善が見られたが、溶存態の割合が高い水質項目については SS ほどの改善が見られなかった。また、地域用水の利用頻度が高い集落のレベルにまで改善する場合、広大な面積が必要であることが判明した。地域用水の水質改善を図るためには、浄化池だけでなく、浄化槽や下水道の普及も併せて行い、浄化池も単なる沈砂池ではなく植栽面積を増やす等の工夫が必要であることを示した。第 6 章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。地域用水が地域の財産であり続けるために、水質保全の重要性を指摘するとともに、景観用水や子供の遊び場または教育の場としての利用等、今後の地域用水の姿を展望した。 |
内容記述: | 環課第2号 |
NII JaLC DOI: | info:doi/10.24795/24201k006 |
URI: | http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/503 |
出現コレクション: | 博士学位論文
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