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タイトル: 看護師が行う「死後の処置」の医療人類学的研究
著者: 比嘉, 肖江
発行日: 2006/03/23
抄録: 本論文は,序章から終章までの全6章で構成されている。 本研究の目的は「死後の処置」を行っている当事者である看護師やRohaniawan(インドネシアジャカルタイスラーム病院のSpiritual care giver)にとって,「死後の処置」の意味を,当事者の視点に沿って明らかにしようとする試みである。そこで,本研究ではインドネシア共和国首都ジャカルタにあるイスラーム病院と日本における「死の取り扱い」という事象に着目した。まず,ジャカルタイスラーム病院における遺体洗浄の実際を民族誌的に明らかにした。次に,日本の病院において看護師が行っている死後の処置を看護師たちが,自分たちでどのように意義づけをし,どのような思いで行っているかという点について考察を行った。そして,ジャカルタイスラーム病院で行われている宗教指導者と家族による遺体洗浄のあり方,日本の看護師と一部の家族による死後の処置,新規参入であるサービスとして行われている葬儀社による湯灌について比較考察を行った。 なお,日本の医療現場では,患者が亡くなると通常,看護師の手によって「死後の処置」が行われる。この看護師による一連の行為は,医療的業務として位置づけられていながらも,実際には看護師を取り巻く慣習・伝承といった文化的要因に強く影響を受けながら不文律に成立している。 序章では,看護学・文化人類学における先行研究の知見および米国疾病管理予防センター感染経路別予防対策のガイドラインから,日本の看護師が行っている「死後の処置」を医療人類学的視点により考察していく上で最重要語となる「けがれ(汚れ)」の概念を整理し,「けがれ(汚れ)」の対象内容の類似点や医療サービスを提供する側からの疑問・問題点等を指摘した。そして,その疑問・問題点の表出を抑圧していた暗黙のルール・タブーを明示した。 第1章では,本研究全体における研究方法について述べた。 第2章では,インドネシアジャカルタイスラーム病院におけるフィールド調査の結果をもとに,インドネシアイスラームにおける「遺体洗浄」についてまとめた。インドネシアイスラームにおいては,「死」の観念(死生観)は,文化的あるいは宗教的な要因に強く影響を受けながら形成されていく。従って,この観念は,亡くなった人に対してどのように振る舞えばよいのかについての指示性をもつ。また,日本とは宗教的背景を異にするインドネシアイスラームでの「死者」に対する処方のありようを報告した。そのことで,日本で行われている「湯灌」の相対化が可能となり,後章で展開する看護師による「死後の処置」の意義究明の手がかりが得られた。 第3章では,仏教における「看取り」の原点である「往生要集」の『臨終行儀』から看 病人の心得について言及した。その古来行われてきた「看取り」の作法過程は身内による習俗としての「湯灌」を包摂するに至るが,現在は葬儀社が「湯灌」の作業工程を握る場面が珍しくなくなっている。これらの変遷の確認は,史実文献を拠り所にして行った。そして,前章で既述した「遺体洗浄」と日本で行われている「湯灌」との同質性を探究した。 第4章 では,看護師が行う湯灌(死後の清拭)に注目した。第3章において,歴史的な観点から「死後の処置」の源流である「湯灌」について考察したが,従来「湯灌」は,看病僧や看病人,家族らによって行われていた。しかし,現代では80%以上の人が自宅外で死亡し,その結果必然的に,「湯灌」の場は病院へと移行している。また,その担い手も身内から看護師(他人の手)へと移譲している。ここでは,「湯灌」について文化的な観点から再考し,「湯灌」の延長線上に出現した看護師による「死後の処置」について論考した。 加えて,看護師の意識調査として,質問紙調査ならびにグループインタビューを実施し「死後の処置」を行う看護師の思いを多角的にまとめた。 以上の研究結果を踏まえて,終章では看護師に課されている課題を指摘し,「死後の処置」における看護ケアの本質と看護師の感情について論じた。
内容記述: 人文課第7号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201k015
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/616
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